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高度不妊治療

高度不妊治療とは

タイミング法や人工授精など、一般不妊医療に対し、体外受精を中心とした高度不妊医療技術を用いた不妊治療法で、保険適応外の治療です。
すでに日本国内では1万人以上の赤ちゃんが高度不妊治療で誕生しています。

高度生殖治療には主に、体外受精顕微授精配偶子(精子・卵子)、胚(受精卵)凍結胚移植の治療から成り立ちます。


高度不妊医療は、タイミング法や人工授精など一般の不妊治療や、腹腔鏡下手術をはじめとする不妊症に対する婦人科手術療法を行っても妊娠にいたらない不妊患者さんを適応とします。
また難治性の男性不妊や免疫性不妊患者さんにも適応され、現段階で高度不妊医療以外に妊娠にいたる方法がなく、本方法が最も適切であると考えられるご夫婦にこの治療法が適応されます。

 
体外受精について

体外受精(IVF)は、1978年、英国において初めて施行された不妊治療法です。
卵巣に出来る卵胞から直接卵子を回収(採卵)し、体外で精子と受精させ、得られた受精卵を子宮内に移植(胚移植)する技術で、日本では1983年に初めて行われ、1999年には33883件に施行され、4549件の生産分娩が報告されています。
2005年では出生児数の約65人に1人が本法による妊娠です。

高度不妊医療合併症と対策
合併症1.卵巣過剰刺激症候群(OHSS)

排卵誘発剤 (主にhMGの注射)によって卵巣が過剰に刺激されて起こる副作用で、卵巣が腫れる(主に8cm以上)下腹部の痛み腹水や胸水がたまる尿量が減る血液が固まりやすくなる、等の症状があります。

排卵誘発剤は、文字通り卵巣から排卵する卵胞の発育を誘発する方法で、卵巣を刺激します。
刺激された卵巣に発育した卵胞の中には、顆粒膜細胞があり、この細胞が女性ホルモンの一つであるエストロゲンを産生します。
エストロゲンは正常の排卵周期を作る最も大切なホルモンの一つですが、過剰に産生されると卵巣過剰刺激症候群(OHSS)引き起こします。


卵巣過剰刺激症候群(OHSS)はすべての人におこるわけではなく、診察では発症していないか、また発症した場合でも悪くなっていないかを診ていきますので、軽症~中症の場合がほとんどです。 症状も次の月経までか、妊娠初期でなくなりますが、妊娠により一時的に悪化します。
中には卵巣過剰刺激症候群(OHSS)になりやすい体質や、重症化して入院治療が必要となる患者さんもいますが、 内服剤で卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が起こることは稀です。


排卵誘発剤は、内服薬、注射薬の順に効果が強くなり、注射薬のなかではFSH製剤、hMG製剤の順に効果が強くなります。 効果が強くなると同時に副作用も多くなります。
また排卵調節に用いるhCG製剤が発症のきっかけとなります。
よって当院では、最初からhMG製剤を用いるのではなく、弱い効果でもなるべく効率よく良好な卵子が採取できるよう、工夫します
またhCG の代わりにGnRHa製剤(ブセレキュア)による排卵調節を行います。


合併症2.多胎妊娠

高度不妊医療の合併症とも言うべき多胎妊娠を防ぐため、当クリニックでは単一胚(細胞)移植(SET)を基本的に行います
多胎妊娠とは、双子(ふたご)以上の妊娠のことです。 自然妊娠でも1%の方が双胎妊娠(ふたご)となります。
多胎妊娠は、一面では確かに喜ばしいです。 一度に可愛い赤ちゃんを二人授かったり、妊娠は大変だから一回で二人欲しい、なるべく沢山子供を産みたいので、双子だったらなおさらよい、色々な意見がありますが、我々産科医の立場からすると、妊娠中のリスクは目を背けることのできない問題です。
「多胎妊娠の妊娠中のトラブル・リスク、双子は2倍、三つ子は3倍??」 我々は双胎妊娠のリスクは単胎の10倍、品胎妊娠(三つ子)は100倍、と説明しています。

多胎妊娠のリスク

・妊娠初期から流産率が高くなります。
・子宮頚管(子宮の出口)が開く、子宮頚管無力症が増えます。
・安定期に入ってからも、切迫早産や、実際に早産になることが多く、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)の合併は大変重要です。
・マイナートラブルとして、貧血が重くなる傾向もあります。
・満期に入ってから、何より、お腹が大きくなる日常生活が大変です。
・赤ちゃんは単胎妊娠と比べ、体重が軽くなる傾向(子宮内胎児発育遅延)があり、満期で産まれても小さいことがあります。
・分娩に際して、合併症のある方は、経腟分娩、帝王切開の選択に迫られます。 双胎妊娠では、必ずしも帝王切開となるわけではありませんが、経腟分娩のリスクが高くなります。 といって、帝王切開のリスクが低いと言う意味ではありません。 品胎妊娠では必ず帝王切開となります。


このように、多胎妊娠では様々なトラブルが生じるリスクが高くなることがあり、未然に防げたらと思います。
高度生殖治療では、移植する胚(受精卵)の数を調節することができます。 胚移植する受精卵が多ければ多いほど単純に妊娠率は高くなりますが、多胎妊娠の発生と妊娠する赤ちゃんの数も多くなります。
これまで受精卵3個胚移植の時代から2個移植の時代へ、さらに現在では単一胚移植(SET)が主流となりつつあります。
一つの受精卵の胚移植では妊娠が成立しにくい、と思われる方もあると思います。 これまでの治療経過など、患者さんの状態に合わせて胚移植については相談していきたいと思います。

周期ごとの高度不妊治療の内容と流れ

大まかに2周期、凍結された受精卵がある場合はそれを子宮に移植する周期から成り立ちます。
周期は、治療前周期(プレトリートメント)と採卵周期があります。

治療前周期
1.プレトリートメント

採卵の前周期の卵胞が発育するのを抑制し、採卵周期に最も効率的に良好な卵子を採取する目的に行います。
主にOC(低用量ピル)が用いられます。

2.採卵前検査

採卵を開始する前に行う検査で、主に安全に採卵を行なうためと体外受精・顕微授精の方針決定、医療従事者への血液・精液を介する感染を予防する目的にご夫婦で行なっていただきます。

3.ET検査

実際に受精卵が移植される胚移植(ET)を模し、ETに用いるカテーテルが子宮に合うか検査します。
同時に腟分泌物培養検査を行ないます。検査後抗生物質を内服します。


採卵周期
1.D3診察

消褪出血(月経)の3日目に受診、採血と超音波検査があります。
採血では卵巣機能を評価し、出血中ですが超音波で卵巣の状態を診て、この周期が卵巣刺激・採卵に適しているか大切な検査です。

2.卵巣刺激法

現在生殖医療で行われている卵巣刺激法は多くの方法があり、それぞれにバリエーションがあります。
特に高度生殖治療ではその種類が実に多岐にわたります。
産婦人科クリニックさくらでは、患者さんの価値観を重視し、最も適した卵巣刺激法を一緒に考えていきます。

3.卵胞発育のモニタリングと採卵日の決定

採卵は自然周期でも卵巣刺激を行う周期でも、卵胞が成熟してから行います。
この卵胞の発育、成熟度を評価するため、超音波と採血によるホルモン検査を行います。

4.排卵のコントロール

採卵の前には、下垂体から分泌されるLHホルモン、またはhCGの刺激が必要です。 卵子の最終的な成熟にかかわるためです。
点鼻薬や注射剤でこれをコントロールします。

5.採卵

あらかじめ鎮痛剤や局所麻酔、場合によっては静脈麻酔を行い、経腟超音波下に卵巣から直接卵子を採取する、高度生殖治療の最も大きな治療となります。

6.受精

受精方法1:体外受精(IVF)
培容器内で、卵子と精子を受精させます。 この受精は、卵管で起こる現象を体外に移したものと考えてください。
精子の数があり、受精能がある方に行われます。
受精方法2:顕微授精(ICSI)
精子数が少ない方、これまでに体外受精(IVF)で受精しなかった方に行います。
受精障害が疑われる場合はSplit ICSIを、前日の体外受精(IVF)で受精卵が得られなかった場合に行うレスキュー顕微授精(ICSI)もあります。

7.受精卵の確認と胚培養

採卵・受精の翌日、受精卵の確認を行います。
引き続き、体外培養を行い、採卵から2、3、5日目のいずれかに胚移植、または受精卵凍結を行います。

8.胚移植(ET)

受精卵を子宮に戻す、大切な治療です。 産婦人科クリニックさくらでは、多胎妊娠予防のため原則、単一胚細胞移植(SET)を行います。
アシステッド・ハッチングを行うこともあります。

9.受精卵凍結

余剰卵がある場合や、卵巣過剰刺激症候群のため胚移植(ET)出来ない場合、子宮内膜が薄く着床に適していないときに、受精卵を凍結保存します。

10.解凍胚移植

凍結保存された受精卵を、解凍した上で子宮に移植します。
以下の周期があります。
1.自然/経口排卵誘発剤周期
通常の排卵周期で解凍胚移植を行います。
2.ホルモン補充周期
自然周期で排卵日が特定しにくい、排卵障害がある、子宮内膜が薄い、など胚移植を行う条件が整わない場合、ホルモン療法を行いつつ胚移植を行います。

11.黄体補充療法

採卵後2日後より受精卵が着床しやすい環境を作るため、黄体補充療法を行います。
特に注射剤による排卵誘発を行った場合の高エストロゲン状態に見合った黄体ホルモンを内服や注射剤で投与します。

12.黄体期診察

採卵後約5日目、または胚移植周期の着床期に行う診察です。
採血と超音波検査があり、充分な黄体ホルモンが補充されているか、子宮内膜厚や卵巣腫大がないか、検査します。

13.妊娠判定

胚移植から14日目に行う、妊娠の判定です。
採血と超音波検査を行うことがあり、黄体期診察と同様に、卵巣過剰刺激症候群の発生の有無を検査します。

妊娠後
1.初期妊婦検診

上記妊娠判定で陽性となった場合は胎嚢(赤ちゃんの入った袋)が子宮内に見えるまで、1週間ごとに、胎嚢が見えてからは2週間ごとに診察をします。
正常の妊娠ではない可能性がある場合、子宮外妊娠や流産の兆候がないか、大切な診察です。
通常妊娠6週で赤ちゃんの心拍が見え、8週くらいで赤ちゃんの大きさがはっきりと測れたら分娩予定日をお伝えし、母子手帳の交付をご案内します。

2.妊娠初期検査

妊娠10週くらいで妊娠初期検査を行います。

3.出生前診断(妊娠中期)

産まれてくる赤ちゃんの病気がないか、誰でも心配はあると思います。
主な検査は、赤ちゃんの染色体(遺伝子)と赤ちゃんの形態をみるものです。
前者には羊水を一部採取する「羊水検査」がありますが、母子への危険性があるため、通常皆さんにお受けいただく検査ではありません。
スクリーニング検査として、「母体血清マーカー検査(クアトロテスト)」があります。 妊娠15週からお受けになることが出来、母体の血液を採取して、赤ちゃんの「ダウン症」「18トリソミー」「神経管異常」の確率をみる検査です。

4.分娩施設へのご紹介

当クリニックでは残念ながら分娩と妊婦検診は行っていません。
これは思いがけないトラブルに、施設の特性上対応できない恐れがあり、その際に患者さんにご迷惑をお掛けしてしまうかも知れないからです。
このため、近隣の分娩施設やご希望の施設へご紹介させていただきます。
紹介先は患者さんのご希望を尊重しつつ、リスクなども慎重に考えて相談したいと思います。

葉酸摂取のおすすめ

妊娠中には様々な栄養素が必要ですが、特に注意して摂取を心がける必要のあるのが、葉酸です。
葉酸不足は以下のような病気をもたらす危険性があります。

神経管閉鎖障害

妊娠初期に葉酸が不足することで、胎児の神経管閉鎖障害の危険性が高まります。
神経管は発達すると脳や脊髄になる器官でこの部分に障害が起こると赤ちゃんの中枢神経の異常や下半身麻痺などの症状を伴います。

悪性貧血

葉酸が不足することで体内の赤血球が正常に作られず、重症な貧血を引き起こします。

妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)

最近葉酸とホモシスティン・活性酸素の関係について発表があり、妊娠高血圧症候群の発症が予防できるとの報告が見られるようになってきました。
さらに赤ちゃんの成長が妨げられた状態である「子宮内胎児発育遅延」の予防効果がある可能性が言われています。


葉酸を沢山含む食品を料理に取り入れる必要がありますが、葉酸は「熱に弱い」「水に溶けやすい」と言った弱点があり、通常の食生活では不足しがちになり、手軽に摂取できるサプリメントが各国で積極的に推奨されています。
上記の神経管閉鎖障害の予防のためには、妊娠する1ヶ月前に摂取し始めることが望ましいです。